咳について


咳には炎症、悪性腫瘍、アレルギー、感染、遺伝的素因などの様々な原因がありますが、今回は肥満が原因で咳を引き起こしてしまう例について説明します。


11歳のチワワさんが咳がなかなか治らないという症状で来院されました。

咳は何かを吐き出すような仕草をする咳、苦しそうにしているといった症状でした。

苦しいからか食欲も落ちてしまっているとの具合でした。

勿論普段は元気で、食欲も旺盛な子でした。


血液検査では目立った所見はなく、呼吸器疾患を疑い、レントゲン検査を行いました。

下の写真が息を吸い込んだ時のレントゲンになります。(ワンちゃんを横に寝かせて撮影しています)


一見レントゲン上では何もなさそうに見えるかもしれませんが、少し見方を変えると次のようなイメージの異常が認められます。


細い黒線で示した部分が気管や気管支になります。線で示した気管や気管支に矢印の方向から圧力がかかり、気管が非常に狭くなることで、このワンちゃんの咳が出ていると判断しました。

内科的治療を行いましたが、すぐには治りきらず、夜も寝づらそうとの飼い主様の稟告より、高濃度酸素室でお預かりし、咳に対する内科治療を継続することで徐々に咳は治まりました。

その後、食事制限も飼い主様に始めていただくことで、体重が減り、咳は大幅に減り、夜もよく眠れるようになり、食欲も安定し、このワンちゃんの状態は改善していきました。


今回のワンちゃんでは内科的治療、酸素管理、食事制限を軸に咳を抑え、治療していきました。

検査所見や治療経過より、減量することが咳を減らす事に大きく関係していると考えられました。

こうした症状の咳は太り気味の小さなワンちゃんに多く起きやすいことが知られており、体型の維持はこうした意味でも重要だと言えます。


このように、咳と症状でも様々な原因が複合的に絡み、危険な状態まで悪化し、単純な治療だけでは反応が悪いということもありますので、お早めにご相談下さい。

また小さな症状のうちから原因を突き止める手がかりがありますので、ちょっと症状でも気軽にご相談ください。