嘔吐が続く

 2歳の女の子の猫ちゃんが1週間ほど前から吐いており、いよいよ食べていないのもあり調子が悪いとのことで来院されました。関係はないかもしれないが、もともと便がすごい細い子なんだともおっしゃっていました。

 

来院された時の状態として、お熱はなく、嘔吐の症状が強く、食欲がなく、しょんぼりした様子でした。

心拍数、呼吸数には異常は認められませんでした。

 

検査結果、血液検査、レントゲン検査では異常な所見は認められませんでした。

超音波検査では胃内に液体の貯留を認め、胃から十二指腸への構造が綺麗に描出できず、一部紐状異物を疑う所見を認めました。

 

1週間続く嘔吐に加え、紐状異物を疑う所見より、内科的治療による反応は乏しく、試験開腹が必要であると考えました。

飼い主様と相談し、試験開腹を行いました。

 

開腹して、丁寧に確認していきましたが、紐状異物はありませんでした。球状の異物もありません。

しかし、よくみていくと、まず胃から十二指腸が猫の割には牽引しづらいことと、その手前に液体による胃の拡張が認められました。

下の写真のような所見です。 

 

明らかに何らかの糸状の脂肪を含んだ組織(糸ではありません!!)によって、      胃と十二指腸の間で狭窄したような構造になっておりました。

この構造物が嘔吐や食欲がない原因はこの部分における物理的な閉塞であると考え、

このピンとはったように胃腸を締め付けている糸状の脂肪を含んだ軟部組織を丁寧に剥離(ゆっくりとはがしとる)し、この締め付けられた状態を解除しました。

下の写真が実際の処置した胃腸の写真です。 

丁寧におなかの中を洗浄し、癒着が起きないように処置し、お腹を閉じました。

術後は少しずつご飯を与えていき、術後の合併症もなく、順調に回復し、無事退院しました。

以上の所見から考えると、腸管の閉塞の原因は紐状異物ではなく、この猫ちゃん自身の腸管付近の組織で癒着が起きてしまい、それにより腸が縛られたようになり、閉塞を起こしておりました。

検査から予想とは大きく違った結果となりましたが、お腹開けてみなければ、診断できないケースでした。

色々な状態や病気を診てまいりましたが、この猫ちゃんは非常に珍しい例でした。

検査により正常ではない構造所見を認め、症状の深刻さ、時間がすでに経ってしまっていたため、試験開腹が早急に必要であると判断し、迅速に治療することができました。

術後に飼い主さんに伺ってみると、よく食べてくれるようになり、以前に比べて便がしっかり太くなったとのことでした。                               おそらく手術前は胃腸の一部が狭くなっており、小さい便しか出せなかったのだと考えられます。