尿管閉塞が原因で嘔吐する猫ちゃん


今回は尿管閉塞の例について、説明させていただきます。


8歳の猫さんが急に何度も吐いて、元気がないとの主訴で来院されました。


1週間前から、少し吐いていたようなのですが、特に今日から何度も吐くとの事でした。


お熱もなく、病院でも少し元気がありません。


体重は4.15kgで、お腹が少し大きいくらいで、栄養状態に問題はありません。


体温は39.3℃と、やや発熱が認められます。


血液検査では白血球の増加、わずかではありますが腎臓に関する数値が上がっていました。

レントゲン検査では肺の一部が嘔吐の影響により誤嚥を起こし、炎症を疑う所見が認められました。(下の画像になります)腸管に

ガスがたまっている部分があります。



超音波検査では腸管には明らかな異常は認められませんでしたが、腎臓の形態に大きな異常を認めました。

片方の腎臓では尿管、および腎盂(腎臓の内部)の拡張を認めました(下画像になります)


反対側の腎臓には大きな嚢胞(液体がたまっている部分)が認められました(下画像です)

 こうした各種検査結果より、水腎症、尿管閉塞、腎臓内部での感染により吐き気を引き起こしていると診断致しました。

すぐに点滴と抗生剤の投与、吐き気を抑えるお薬の投与を4日間行い、少しずつ吐き気もおさまり、食欲も改善し、元気になりまし

た。



体調が良くなったところで、腎臓の形態を確認させていただくと、やはり腎臓の形態は比較的正常に近い状態に戻っていました。

腎臓内部の拡張や嚢胞のあった領域はほとんど嚢胞がわからない状態に戻っていました。

下の画像が実際の画像になります。

 以上の経過を踏まえると、この猫さんの場合は、急激に腎臓内で感染が起きる事により、嘔吐が生じたと考えられます。

何度も嘔吐することにより脱水が起き、腎臓の体液の流れも悪くなり、尿管の閉塞を生じた可能性が考えられます。(微小な結石が閉塞の原因になった可能性もありますが、、、。)

治療により脱水が改善し、腎臓領域の感染に対しては抗生剤で改善しました。

 水和状態が改善する事で腎臓から膀胱への尿管の流れも改善し、スムーズに尿の流れが確保されることで、状態が大きく改善したと考えられます。

 幸い、この猫さんの場合は比較的初期の段階で治療に進むことができていたので、内科治療に反応し、腎臓への負担も最小限で済みました。

 人であれば、尿管閉塞の際には必ず腹部の違和感といった症状があるはずなのですが、言葉を話せない動物に対しては適切な検査、治療が大切になってきます。