猫の肥大性心筋症
<はじめに>
肥大性心筋症(HCM)の特徴は、心臓の主なポンプ機能を担っている左心室の壁が厚くなる事であり、
他の医学的な状態(高血圧など)とは関係ない。
重篤なケースでは、心筋症によって肺に水が溜まり、心不全を引き起こす。
心臓内に血栓が形成されることもあり、それらが血流とともに運ばれて、一箇所あるいはそれ以上の足の血管に
詰まってしまうことがある。(特に後肢に多い)
HCMは軽症のこともあれば、命にかかわることもある。
この病気はどの年齢でも起こりうるが、特に6ヶ月から4歳までの猫に多く見られ、中でもメーンクーンや、ペルシャ
ラグドール種の雄に最も多く見られる。
HCMの主な原因は遺伝である。心筋症を持った猫が呼吸困難や心不全を誘発する要因というのは、次のような物
がある。まず、発熱、感染、ストレス(もちろん、獣医師に会うことだって、原因となる。)、麻酔、鎮静、そして
静脈注射、などである。
<どんな事に注意するか>
・音を立てて苦しそうに、口をあけて呼吸している。
・片方、あるいは両方の足が突然使えない。
・奇妙な姿勢をとる。 胸を下にしてしゃがんだり、横たわったりする。そのとき、頭を伸ばして、肘を外側に
突き出すことがある。
・食欲がなくなる。
・体重減少
・活動低下
これらの徴候に気づいたら、すぐ獣医師に診せましょう。
<獣医師によるケア>
獣医師による診断的テストには、基になっている原因を特定し、それに続く治療の指針を推奨するという、
意味がある。
<診断>
診断テストによって、HCMであると言う事を確認し、他の病気を除外する必要がある。それには、次のような、
テストがある。
・完全な病歴聴取と身体検査、これには聴診器を使った心肺機能の観察が含まれる。
・胸部レントゲン
・超音波(心臓エコー)
これは痛みのない検査で、プローブを胸部に当てるだけのもので、最初の検査の時には、
胸の毛を刈る必要がある。
・心電図。(EKG) これは普段でも心臓から出ているごくわずかな電気的信号を増幅することによって、
心臓の電気的な活動を紙に記録したものである。
・猫の状態を評価し、治療に対する反応をモニターするための血液検査。
<治療>
何も症状のないような、非常に軽いケースでは、特に治療する必要はないが、定期的に獣医師のもとを訪れて、
経過を観察しておくことが重要である。
重篤な例では、最初から入院治療が必要となることがある。
肥大性心筋症の重篤な例では、命にかかわる事がある。
<家庭での看護>
指示通りに薬を与え、落ち着いているときの呼吸数を定期的に計るようにする。
心拍数の計り方を学び、結果を記録し、定期的にこの情報を獣医師に伝えてください。
ストレスのかかる状況をできれば減らして下さい。
多くの猫は、室内で飼われるのが一番良いものです。
<予防的ケア>
この病気は遺伝的と考えられるので、予防法はない。この病気に罹った猫は繁殖に使うべきではない。