犬の特発性てんかん

<はじめに>

特発性のてんかんというのは、はっきりとした原因なしに起きる発作性障害のことをいう専門用語である。

それはまた遺伝的、あるいは先天的てんかんとも呼ばれる。

てんかん、発作、ひきつけ、あるいはけいれんと言う言葉は皆、同じ事を表しており、脳内のニューロンが突然、

発作的で連続した電気的放電を起こしたときに現われる体の状態のことである。

その結果、随意筋の不随意の収縮や、異常な興奮、異常な行動、あるいはこれらのいくつかが同時に起きる。

あなたの犬に症状が出るとき、様々な現われ方をすることがあり、単にぽかんとした目つきで、顔の一部を

ひくひくさせるだけの場合から、ばたんと横に倒れて、吼えたり、歯軋りをしたり、尿を漏らしたり、排便したり、

足をばたばたさせたりというひどい現われ方をする場合がある。

 

てんかんは普通、突然に始まるが、自然に治まってしまう事が多く、その時間はせいぜい何十秒から、

何分の間である。

特発性てんかんは、雑種のみならず、すべての純血種に起こりうる。

特発性のてんかんや、てんかんの素質というものは嫌われる傾向にあるので、てんかんの動物や、

その一等親の個体は繁殖につかうべきではない。

 

<てんかんの構成要素>

てんかんには次の三つの段階がある。

・前兆   てんかんの直前になると、いろんな徴候が見られる。

      例えば、そわそわしたり、鼻をならしたり、顔を振ったり、よだれを垂らしたり、そばから離れなかったり、

      うろうろしたり、物陰に隠れたり、等である。

      これらの徴候はほんの何秒で終わることもあれば、何日間も続く事があり、あなたがそれに気づくとは

      限らない。

・発作   発作の続く間、てんかんが起きている。その期間は数秒から数分の間である。あなたの犬はその間、

      倒れて、まるで何かを蹴るかのように、足をばたばたさせることがあるかもしれない。

      そのとき、よだれを垂らしたり、失禁をしたり、回りのものに無関心になることもある。

・発作後の状態

あなたの犬はいったい何が起きたのかわからなくて、困ったような表情をしたり、うろうろ歩き回ったりするかも

しれない。そして、しばらくよだれが続いたり、あなたの呼びかけに反応しないかも知れない。

あるいは逆に、あなたに慰めてもらおうと近寄ってくるかもしれない。

この期間は短いこともあるが、何日にもわたることもある。

 

<あなたのペットにてんかんが現われたらどうするか。>

・パニックに陥ってはいけません。

もしあなたのペットがてんかんを起こしていても、犬自身にはそれが分からず、また苦しんでいるわけではない。

あたかも呼吸をしていないように見えるかもしれないが、実は呼吸しているのである。

・発作の時間を計る。

実際に時計を見て、その時間を記録してみましょう。まるで永遠に続くかのように思われても、せいぜい30秒位

かもしれない。

・家具などが倒れてきてあなたのペットが怪我をしないように気をつけましょう。

その他にも、水や階段や、先の鋭いものから守ってあげましょう。もし可能であれば、頭に外傷を起こさないよう、

枕を頭の下にしいてあげましょう。

・もし、てんかんが五分以上続くようであれば、あなたの獣医師に直ちに連絡してください。

・ペットが舌をのどに詰めることはありえない。

犬の口の中に手を入れてはいけない。 噛まれるかも知れない。スプーンや他の道具を口の中に入れてはいけない。

 

<てんかんの後に>

・あなたのペットのてんかんの後の様子を見てください。

あなたのペットが完全に回復するまでは階段に近づかないようにしてあげてください。

もし、水を欲しがれば、与えても構いません。

・てんかんの後、吼えたり、よろよろすることがありますが、あなた自身がしっかりとして、あなたのペットをささえ、

やさしく包んであげる必要があります。

彼自身何が起きたのかわからず、なにか悪い事をしたと感じているかもしれません。

やさしい声で語りかけてください。

・30分ほど経っても完全に回復しないときはあなたの獣医師に連絡してください。

 

<救急時に獣医師が注意する徴候>

・10分以上にわたる発作

・24時間に2回以上起きる発作

・最初の発作が起きてから、まだ完全に回復しないうちに次の発作が起きる。

 

<獣医師による手当て>

獣医師はまず診断し、それから後の治療を勧める。

 

<診断>

まず言える事は、特発性てんかんは発作性障害であるが、その原因が不明である。

しかしながら、あなたの獣医師が、あなたのペットには全身的な問題がなく、けいれんを引き起こすような病気を

持っていない事をはっきりさせてくれる事が大事である。

あなたの獣医師はまず、詳細な病歴を取り、完全な身体検査と神経学的検査をするだろう。

推奨される血液検査には次のようなものがある。

まず完全血球検査、血清生化学パネル、毒物評価、感染症の評価、尿分析、検便

 

<治療>

治療の目的は、副作用を起こさない範囲でけいれんの激しさと頻度を抑えることである。

猫の場合、特発性てんかんを完全に抑えることは難しい。

この状態を抑えるために、抗けいれん薬を選択することもある。

 

<薬物療法>

・フェノバルビタールが特発性てんかんの最初の治療薬として、選ばれる。

最初は体重一キロ当たり、2ミリグラムを1日2回与えるところから始めて、1日2〜3回に増やしていく。

この薬を使い始めて10〜14日の期間には、水をよく飲んだりとか、多尿や多食といった副作用が現われること

がある。

これらの副作用は一時的なもので、始めてから二週間ぐらいで治まる。

・この他、猫でよく用いられる抗けいれん薬にはジアゼパムやバリアム等がある。

これらは1日に3回投与する。

大変稀ではあるがあるが、特異体質により、ジアゼパムが肝不全を起こして死に至るという深刻な例もある。

ジアゼパムは普通、てんかん重積状態に対して、用いられる。

あなたの獣医師はふつうそれを救急状態のときに、静脈ルートで用いるだろう。

・ブロマイドは臭素酸カリウムや臭素酸ナトリウムの活性成分であり、もう一つの抗けいれん薬として、

フェノバールと一緒に用いたり、最初から単独で用いられたりする。

最初フェノバール単独では十分効果のなかった猫も、ブロマイドを加える事により、けいれんの頻度と激しさが、

大幅に抑えられることがある。

ブロマイドはまた、肝臓疾患をもつ動物にとっての選択薬でもある。

ブロマイドの副作用には多食、多飲、多尿や強調不能などがある。

これらの副作用はいずれも一時的なものであるが、もし問題になるのであれば、使用する薬物のうち、

どれかの量を減らす事が望まれる。

 

<家庭での看護>

家庭においては、獣医師の指示通り、注意深く薬を与えて、その反応を見守ってください。

そして、発作時の様子や、投薬の変更、獣医師への通院、および他の病気についての情報をまとめた、

てんかんの記録をちゃんとつけるようにしましょう。

きまぐれに薬を飲ませたり、薬用量を突然変えたりしてはいけません。

なぜなら、そうすることによって、30分以上にわたって発作が継続したり、間をおかずに発作が繰り返されるという

てんかん重積状態を引き起こす事があり、むしろ、何もしないより悪いことがあるからです。

 

あなたのペットの治療に対する反応を見るため、あるいは抗けいれん薬だけではなく、

けいれんによる有毒な作用から守るためにも、血液検査が必要です。

 

特発性のてんかんと診断されても、それで死ぬと決まったわけではない。

てんかんの場合、大半のケースではうまく管理できる慢性の病気である。

あなたのペットを救う方法があります。

あなたが良い関係を築けると思う獣医師とともに、治療に取り組みましょう。

そして、てんかんとその治療についてよく学びましょう。