皮膚をなめすぎて赤くなっている

 

 14歳の雑種の大型のワンちゃんが、陰嚢の付近を舐めてすごく気にしているとのことで来院されました。


診ると、傷は3cmほどで、細菌性膿皮症と診断し、消毒を始めました。


 しかし、消毒をしながら、よく傷を見ると膿がうすくこびり付き傷が深く、ややえぐれたようになっておりました。(写真は申し訳ありませんが、今回はございません)


 初日は消毒と抗生剤や痛みを和らげるお薬を処方しましたが、2日後に再度診察すると、まだあまり改善が認められない様子なので、再度飼い主様にお話しを伺うと、食欲も落ちて少し元気もないとのことでした。


 体温もやや上がっており、傷の場所が陰茎に近い部分なので、排尿時にやや痛そうにしているとのことでした。触診ではさほど腫れは確認できなかったのですが、強い痛みが出てきていると判断しました。


 この段階で当初診断していた細菌性膿皮症ではなく、深在膿皮症であると診断し、治療には違和感を和らげるお薬を追加し、経過を観察したところ、排尿時の違和感もなくなり、元気・食欲も大きく改善し、元気になりました。


 つまり、このワンちゃんの場合、一見すると、小さな皮膚炎で、単なる膿皮症と早合点して、治療をしておりましたが、治療経過から考えると、深在性膿皮症であったと考えられます。


 深在性膿皮症とは、大まかに説明すると傷の感染がより深いところに到達し、全身に炎症反応が広がっている状態を指します。外側から見た傷の範囲は小さな皮膚炎に見えても、実際は大きく症状が進行していたという事になります。

当初の膿皮症の治療として方向性は間違っていないのですが、深在性膿皮症となるとやはり使用する薬剤の量、種類が少し変わってきます。


やはり症状を話すことができない動物の兆候を客観的に評価し治療を考えることは非常に大切であると実感いたしました。